東京高等裁判所 平成6年(行ケ)156号 判決 1997年4月08日
愛媛県川之江市川之江町910番地
原告
株式会社大昌鉄工所
同代表者代表取締役
福崎健司
同訴訟代理人弁護士
中嶋邦明
同
松田成治
同
平尾宏紀
同訴訟代理人弁理士
鎌田文二
同
東尾正博
同
鳥居和久
香川県三豊郡大野原町大字福田原241番地の1
被告
株式会社石津製作所
同代表者代表取締役
石津登
同訴訟代理人弁護士
河村正和
同
柳瀬治夫
同訴訟代理人弁理士
大浜博
主文
特許庁が平成4年審判第21465号事件について平成6年4月28日にした審決を取り消す。
訴訟費用は被告の負担とする。
事実
第1 当事者の求めた裁判
1 原告
主文同旨
2 被告
(1) 原告の請求を棄却する。
(2) 訴訟費用は原告の負担とする。
第2 請求の原因
1 特許庁における手続の経緯
被告は、名称を「ミシン目つき無芯ロール製造装置」とする特許第1592863号発明(昭和56年8月31日出願、平成2年4月12日出願公告、平成2年12月14日設定登録、以下「本件発明」という。)の特許権者である。
原告は、平成4年11月11日、特許庁に対し、被告を被請求人として本件発明について無効審判を請求し、同年審判第21465号事件として審理された結果、平成6年4月28日、「本件審判請求は、成り立たない。」との審決がなされ、その謄本は、同年6月9日、原告に対し送達された。
2 本件発明の要旨(特許請求の範囲の記載)
ウエブWの原反ロール1をウエブ巻戻し方向に回転自在に支持するための原反ロール支持装置Aと、前記原反ロール1から巻戻されるウエブWを一定速度で送給するためのウエブ送り装置Bと、前記ウエブWに1シート幅ごとにミシン目34を入れるための回転刃ロール6を有するパーフォレーション装置Cと、前記ウエブWを規定位置に位置決めしたミシン目34のところで切断するためのウエブ切断装置Eと、切断されたウエブWの端Waを芯棒12に巻付けるためのウエブ巻付け装置Fと、芯棒12に巻付けられたウエブWを該芯棒12の周りで所定シート数をもつ小ロール13に巻上げるためのウエブ巻上げ装置Gと、前記ウエブ送り装置Bと、パーフォレーション装置Cとウエブ巻上げ装置Gを駆動するための適宜の駆動装置Hとを有し、さらに該駆動装置Hに、適宜のカウンター装置97によって計数されたミシン目形成数が所定数に達したところで該駆動装置Hへの動力供給を停止ししかも前記ウエブ切断装置Eにおいて前記ウエブWのミシン目34が前記規定位置に位置決めされるべき位相において前記ウエブ送り装置Bとパーフォレーション装置Cとウエブ巻上げ装置Gとを停止させるための定位置停止装置Iを付設したことを特徴とするミシン目つき無芯ロール製造装置(別紙図面(1)参照)。
3 審決の理由の要点(本件訴訟に関係しない部分を除く。)
(1) 本件発明の要旨は前項記載のとおりである。
(2) これに対し、請求人(原告)は、審判手続における甲第3及び第4号証(本訴における甲第5及び第6号証)を提出し、本件発明は、審判手続における甲第3号証(本訴における甲第5号証)に記載された装置に、同第4号証(本訴における甲第6号証)に記載されたオートカウンター10の構成を組み合わせ、あるいは、同第3号証におけるパーフォレーション装置10を同第4号証におけるミシンロール22と置換することにより、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法29条2項の規定に該当し、同法123条1項1号の規定により無効とすべきであると主張する。
(3)ア 審判手続における甲第3号証(本訴における甲第5号証、昭和54年特許出願公告第1859号公報、以下「引用例1」といい、同引用例記載の発明を「引用発明1」という。)には、次のとおりの発明が記載されている。
紙などのシートを、ロール巻きされている原反から繰り出して、所定の長さずつ芯に巻き取らせ、小巻きのシートロールを製造する装置に関するものであって、シート11′の原反ロール11を、ウエブ巻戻し方向に回転自在に支持するための原反ロール支持装置と、前記シート11′に巻取りの最終段階において、切断用に一本だけミシン目10′を入れるためのパーフォレーション装置10と、前記シート11′を、規定位置に位置決めしたミシン目のところで切断するための切断装置22と、切断されたシート11′の端を芯13nに巻き付けるための、ローラ3′を含むローラ3等からなる巻付け装置と、芯13nに巻き付けられたシート11′を、該芯13nの周りで所定長を持つ小巻きのシートロール13に巻き上げるための、ローラ3の群と下部ローラ7からなるシート巻上げ装置と、巻き上げたシートが所定長に達したところで巻上げを停止し、前記切断装置22において、前記シート11′のミシン目10′が前記規定位置に位置するように前記シート11'を繰り出して、前記規定位置で停止させるための主軸1の角回転装置を設けた、小巻きのシートロール製造装置(別紙図面(2)参照)
イ 審判手続における甲第4号証(本訴における甲第6号証、昭和42年特許出願公告第6007号公報、以下「引用例2」といい、同引用例記載の発明を「引用発明2」という。)には、次のとおり記載されている。
「駆動ドラム2に外接させたロール9の円周長さと、ロール9とオートカウンター10の回転比を(例えばロールの円周長さを1米、回転比を1:1のごとく)定めておけば、カウンターの表示目盛により紙の捲取られた長さを知り得るとともに、目盛りが設定値に達するとクラッチが断となり、モーターの回転に拘らず駆動ドラムの回転を自動的に停止させて捲取りを止めさせられる」(別紙図面(3)参照)
(4) 本件発明と引用発明1、2とを対比すると、
ア 本件発明は、ミシン目付き無芯ロールを製造するために、「ウエブWに1シート幅ごとにミシン目34を入れるための回転刃ロール6を有するパーフォレーション装置C」の構成要素、及び、その要素と関連する、「駆動装置Hに、適宜のカウンター装置97によって計数されたミシン目形成数が所定数に達したところで該駆動装置Hへの動力供給を停止ししかも前記ウエブ切断装置Eにおいて前記ウエブWのミシン目34が前記規定位置に位置決めされるべき位相において前記ウエブ送り装置Bとパーフォレーション装置Cとウエブ巻上げ装置Gとを停止させるための定位置停止装置Iを付設した」との構成要素を備えたものである。
イ これに対し、引用発明1及び2は、いずれも、ミシン目付き無芯ロールを製造することを目的にするものではないし、また意図するような構成をなしているものでもない。
確かに、引用発明1には、巻取りの最終段階において、切断用に一本だけシートにミシン目を入れるパーフォレーション装置が具備されているが、本件発明のように、1シート幅毎にミシン目を入れ、それをカウントするためのパーフォレーション装置とは、機能的にみても異なる。
ウ したがって、請求人(原告)の主張するように、引用発明1に引用発明2を組み合わせ、あるいは、置換したとしても、前記の点の構成要素を備えた本件発明を構成することはできない。
そして、本件発明は、このような構成要素を有することにより、本件発明の明細書(以下「本件明細書」という。)に記載された、「適宜のカウンター装置によって計数されたミシン目形成数が所定数に達したところで駆動装置への動力供給を停止ししかも前記ウエブ切断装置においてウエブのミシン目が規定位置に位置決めされるべき位相においてウエブ送り装置とパーフォレーション装置とウエブ巻上げ装置とを停止させるようにした定位置停止装置によってウエブを所定シート数毎に規定位置で正確に停止させてミシン目のところから切断するようにしているため、小ロール側に巻取られるシート数が常に正確であり、特に容器詰めウエットティシュの場合の如く内容シート数を箱に表示したものにおいてはその表示数量と内容数量とが常に一致しているためその商品価値が向上する」(40頁下から9行目ないし41頁上から5行目)との作用効果を奏するものであるから、当業者が、引用発明1及び2から容易に発明することができたものとはいえない。
(5) 以上のとおりであるから、請求人(原告)の主張によっては、本件発明を無効とすることはできない。
4 審決を取り消すべき事由
審決の理由の要点(1)ないし(3)、(4)アは認め、その余は争う。
審決は、本件発明が、引用発明1及び2の組合わせないしはその間の構成の置換により容易に発明することができたにもかかわらず、引用発明2の構成についての認定を誤り、引用発明1及び2から容易に発明することができないとしたものであるから、違法であり、取り消されるべきである。
(1) 引用例2においては、「22は駆動ドラム2上で原紙に一定長さ毎にミシン目を刻むミシンロールであり、図示してないが、切断ロール4、4'とともに駆動ドラム2から回転を伝達されるものである。」(1頁右欄37行ないし40行)と記載されているが、上記の「ミシンロール22」は、まさに、本件発明にいう「パーフォレーション装置C」に相当するものである。
したがって、引用発明2は、原紙に一定長さ毎にミシン目を刻むミシンロール22の構成を備えたものであるから、同発明について、ミシン目付き無芯ロールを製造する目的も、そのための構成も有しないとした審決の認定判断は、明らかに誤りである。
(2) また、引用発明2には、巻き上げたロール5の巻取り長さを計数するカウンター10も備わっている。
そして、本件発明と引用発明2とを対比すると、本件発明は、パーフォレーション装置Cによって1シート幅毎にミシン目を入れ、適宜のカウンター97によってミシン目を計数(カウント)するものであるのに対して、引用発明2は、ミシンロール22によって1シート幅毎にミシン目を入れ、カウンター10によって、巻き上げたロール5の巻取り長さを計数するものである。
したがって、本件発明と引用発明2との間には、カウンターを、巻き上げたロールの巻取り長さを計数するものとして用いるか、ミシン目数を計数するものとして用いるかの相違があるにすぎない。巻取り長さとミシン目数とは比例しており、引用発明2では、カウンター10を用いてミシン目数を計数することもできるから、両者は実質的に同じである。
(3) なお、本件発明における、芯棒に巻き上げたロールから、芯棒を取り外して無芯ロールとするための構成については、特許請求の範囲に記載がなく、また、このように無芯ロールとするための構成は周知であるから、本件発明が「無芯」ロール製造装置であるとしても、これをもって、各引用例との相違点とすることはできない。
(4) これに対し、被告は、本件発明と引用発明2の計測方法の違いにより生じる、ロールの巻取り長さについての精度の違いを主張するが、本件明細書には、ロールの全長又はロールの1シートの長さの精度について何らの記載もないばかりか、本件発明の特許請求の範囲には、本件発明の「適宜のカウンター装置97」が、被告主張のような「ミシン目形成数それ自体を計測するもの」に限定される旨の記載もない上、かえって、本件明細書中の本件発明の実施例については、「1回転毎にたとえば20パルスの信号を発信するようにしたパルス発信器を回転刃ロール軸66の軸端に取付けて構成されている。」と記載され(31頁11行ないし14行)、別紙図面(1)にもそのように図示されていることから、本件発明の「カウンター装置97」とは、回転刃ロール軸66の回転数等を計数して、間接的にミシン目形成数を算出するものをも含むと理解される。
(5) そうすると、本件発明における上記の各点以外の構成は、引用発明1又は2の構成中に存在するところであるから、本件発明は、引用発明1及び2の組合わせないしはその間の構成の置換により、容易に発明することができたものである。
したがって、本件発明が、引用発明1及び2から容易に発明することができないとした審決は、その認定、判断を誤ったものというべきである。
第3 請求の原因の認否及び被告の反論
1 請求の原因1ないし3の各事実は認める。
同4は争う。
審決の認定、判断は正当であり、審決に原告主張の違法はない。
2 取消事由についての被告の反論
(1) 原告は、審決が、引用発明2について、原紙に一定長さ毎にミシン目を刻む「ミシンロール22」の構成を備えていることを看過したものと主張する。
しかしながら、審決は、「本件発明は、定位置停止装置Ⅰを構成要素として備えたものである」との指摘をした上で、引用発明1及び2について、そのいずれも「ミシン目付き無芯ロールを製造することを目的とするものではないし、また意図するような構成をなしているものでもない。」と認定したものであって、原告主張のように、引用発明2について、「ミシンロール22」の構成を備えていることを看過したというより、引用発明2は、本件発明の目的とも、意図するような構成(定位置停止装置Ⅰの付設)とも、全く無関係なものであると認定しているのである。
したがって、審決が、引用発明2の「ミシンロール22」について言及していないとしても、そこには何らの誤りもない。
(2) また、原告は、本件発明と引用発明2との間には、カウンターを、巻き上げたロールの巻取り長さを計数するものとして用いるか、ミシン目数を計数するものとして用いるかの相違があるにすぎず、両者は実質的に同じものであるから、本件発明は、引用発明1及び引用発明2の組合わせないしはその間の構成の置換により容易に発明することができたものと主張する。
しかしながら、引用発明2のように、オートカウンター10によりロールの巻取り長さを計測するものについての許容誤差は、引用発明2が発行された昭和42年当時においては、ロール巻取り長さの+5%(50メートルロールであれば+2.5メートル、日本規格協会編集「JISハンドブック紙・パルプ」財団法人日本規格協会平成3年4月20日発行、480頁参照)にも及ぶものであった。一方、本件発明は、ミシン目切断端部の長さの、せいぜいミリメートル単位の僅かな誤差を防止することを目的として、巻取り長さではなく、ミシン目形成数それ自体を計測するようにしたものであるから、その技術的意義は、引用発明2とはまったく異なるものである。
巻き上げたロールの巻取り長さの計数と、ミシン目数の計数とが実質的に同じものであるというためには、引用発明2において使用されているオートカウンターの精度が、例えば50ないし60メートルの巻取り長さに対し、シート1枚分の誤差(例えば20センチメートル程度)をも許容しない程度の高精度のものでなければならないが、引用発明2のオートカウンターはそのようなものではない。
また、本件明細書中の本件発明の実施例においては、回転刃ロール軸66の回転数を計測することによって、直接にミシン目形成数をカウントしているのに対し、引用発明2においては、そのような技術的事項を何ら開示していない。
したがって、原告の主張は、本件発明と引用発明2との技術思想的差異を無視して審決を非難するものであって、理由がないというべきである。
(3) 以上のとおりであるから、当業者において、本件発明を、引用発明1及び2から容易に想到し得るものではないとした審決は、正当である。
第4 証拠
証拠関係は、本件記録中の書証目録に記載のとおりであるから、これを引用する。
理由
第1 請求の原因1ないし3の各事実(特許庁における手続の経緯、本件発明の要旨、審決の理由の要点)については当事者間に争いがない。
また、引用例1及び2の各記載内容が審決記載のとおりであることについても当事者間に争いがない。
第2 本件発明の概要について
成立に争いのない甲第2号証(本件明細書)によると、本件発明の概要は以下のとおりである。
1 本件発明は、所定シート幅毎にミシン目を有し、使用に際しては、適宜のシート数ずつ切り離して使用されるウエブ、例えば、比較的腰が強くて湿潤強度の高い、ウェットティシュ用のウエブ等を、所定のシート数毎に無芯ロール状に巻き上げるための、ミシン目付き無芯ロールの製造装置に関するものである(2頁15行ないし3頁1行)。
2 この種のミシン目付き無芯ロールは、所定シート数ずつロール状にして容器詰めされており、しかも、使用に際しては、適宜シート数ずつ切り離して使用されるため、特に、容器詰めされたウエブのシート数が正確であること、巻始め、巻終り部分に折りじわ、引き千切り等の不良部分がないことが要求される。そのため、ウエブを、反復的にかつ所定シート数毎に、所定位置で確実に停止させ、しかも、必ずミシン目のところで切断するとともに、切断されたウエブ端に、折り重なり部分あるいはシワを生じさせることなく、ウエブ端を正確に芯棒上に巻き付ける必要がある(3頁2行ないし13行)。
しかるに、従来のこの種のミシン目付きロール製造装置においては、この点に対する配慮が十分になされていなかったため、容器に表示されたシート数と、実際に容器詰めされたシート数とが異なっていたり、巻始め、巻終り部分に折りじわ、引き千切り等の不良部分があって、全シートを有効に利用することができなかったりするなどの製品が生じ、商品価値の低下を招く一因となっていた(3頁14行ないし4頁1行)。
3 本件発明は、上記のような問題点に鑑み、所定シート幅にミシン目を入れたウエブを、反復して、所定シート数毎に、必ずミシン目位置において切断した上、無芯ロール状に巻き上げるとともに、ウエブ端に折りじわ等を発生させることなく、それを芯棒に正確に巻き付けることができるようにした、ミシン目付き無芯ロールの製造装置を提供することを目的として、要旨記載の構成を採用したものである(4頁2行ないし5頁11行)。
4 本件発明に係るミシン目付き無芯ロール製造装置においては、小ロール側に巻き取られるシート数が常に正確なものであるため、特に、容器詰めウェットティシュの場合のような、内容シート数を箱に表示したものにおいては、その表示数と内容数量とが常に一致し、商品価値が向上するという作用効果を奏する。
また、上記装置においては、切断されるべきミシン目を、定位置停止装置によって、規定位置に正確に停止させ、切断するようにしているため、芯棒の表面に巻き付けられるウエブの端部が常に規定された一定の長さとなり、ウエブ切断端部が長すぎたり、短すぎたりして起きるウエブの巻始め部の折りじわ、あるいは折り重なり部の不良部が発生せず、ウエブを巻始めから巻終り部まですべて使用することができ、その使用価値及び商品価値が向上するという作用効果も奏する(40頁10行ないし41頁15行)。
第3 審決取消事由について
そこで、原告主張の審決取消事由について判断する。
1 まず、原告は、引用例2には、本件発明と同様のパーフォレーション装置が記載されているにもかかわらず、審決は、それを看過したものと主張する。
そして、審決においては、請求原因3(4)のとおり、本件発明及び引用発明1の各パーフォレーション装置についての認定、判断が示されているが、引用発明2においても上記装置が具備されているか否かについては、特に言及されておらず、更に、審決は、本件発明と引用発明1の各パーフォレーション装置の機能の差異を前提に、本件発明が、各引用例から容易に発明することができたとはいえないと判断したものであることが明らかである。
2 ところで、本件発明のパーフォレーション装置とは、本件発明の特許請求の範囲の記載によれば、「前記ウエブWに1シート幅ごとにミシン目34を入れるための回転刃ロール6を有するパーフォレーション装置C」であり、「パーフォレーション装置C(略)を駆動するための適宜の駆動装置Hとを有し」とされているものであるから、上記パーフォレーション装置は、駆動装置Hによって回転駆動され、ウエブの一定長毎にミシン目を刻むものであることが明らかである。
3 これに対し、成立に争いのない甲第6号証(引用例2)によると、引用例2においては、引用発明2(「トイレットペーパー用マシーンにおけるトイレットペーパーの巻長規整装置」)のミシンロール22について、「22は駆動ドラム2上で原紙に一定長さ毎にミシン目を刻むミシンロールであり、図示していないが、切断ロール4、4′とともに駆動ドラム2から回転を伝達されるものである。」(1頁右欄37行ないし40行)と記載されていることが認められる。
4 上記引用例2の記載によると、引用発明2のミシンロール22は、駆動ドラムによって回転させられ、それによって、原紙に、一定の長さ毎にミシン目を入れるものであると解されるから、その構成及び機能の点において、本件発明のパーフォレーション装置と何ら異なるものではないというべきである。
5 もっとも、審決は、本件発明はパーフォレーション装置Cの構成要素及びその要素と関連の前記本件発明の要旨記載の定位置停止装置Iの構成要素を備えたものであるのに対し、引用発明1及び2はそのようなミシン目付き無芯ロールを製造することを目的とするものでないし、また意図するような構成を成しているものではない、と認定判断している。
しかしながら、引用発明1は、前記審決の理由の要点(3)ア記載のどおり、「シート11'のミシン目10'が前記規定位置に位置するように前記シート11'を繰り出して、前記規定位置で停止させるための主軸1の角回転装置を設けた」構成を備えたものであることは、当事者間に争いがなく、成立に争いのない甲第5号証の記載内容(1欄末行ないし2欄10行、5欄31行ないし6欄1行等)に照らし、引用発明1は巻き取ったシートが所定長さになったときに巻取りを停止し続いて原紙を定位置に停止させてミシン目のところで切断する定位置停止装置を備えたものであって、引用例1には本件発明の定位置停止装置と同一の構成が開示されていることは明らかである。
そして、ミシン目付き無芯ロールにおいて、前記第2、2認定のように、シート数を正確にし、巻始め、巻終わり部分に不良部分がないようにすることは、当業者であれば、当然に認識する技術的課題(目的)であるから、引用発明1において、そのパーフォレーション装置に代えて引用発明2のミシンロールを適用して本件発明の構成を得ることは、当業者であれば、容易に想到できたことであって、その置換に格別の困難は見出だせない。また、その結果、審決がその理由の要点(4)において認定した「小ロール側に巻取られるシート数が常に正確であり、特に容器詰めウエットティシュの場合の如く内容シート数を箱に表示したものにおいてはその表示数量と内容数量とが常に一致しているためその商品価値が向上する」という作用効果を奏することは、当業者であれば、当然に予測し得た事項にすぎない。
6 そうすると、審決が引用発明2のミシンロール22について何ら言及することなく、引用発明1におけるパーフォレーション装置が本件発明のそれと機能的にみて異なり、引用発明1に引用発明2を組み合わせあるいは置換しても本件発明を構成することができず、本件発明の前記作用効果を奏することはできないと認定判断したことは、明らかに誤りである。
7 そして、前記1の後段のとおりの審決の理由における判断内容からみるならば、審決における引用例2についての前記認定の誤りが、本件発明の容易想到性を否定した審決の結論に影響を及ぼすものであることは明らかである。
8 なお、原告及び被告は、更に、本件発明と引用発明2の各カウンター装置の実質的同一性についても互いに主張しており、その主張の趣旨は前記7の判断に関するものとも解されるが、審決においては、本件発明のカウンター装置と引用発明1のカウンター装置との間の具体的な対比及びそれが本件発明の容易推考性に対し及ぼすべき影響等について、特に判断を示しているものではないので、当審においても検討を要しないものというべきである。
第4 以上によれば、審決は、違法として取消しを免れず、原告の本訴請求は理由があるものというべきであるから、これを認容することとし、訴訟費用の負担について行政事件訴訟法7条、民事訴訟法89条を適用して、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 竹田稔 裁判官 春日民雄 裁判官 持本健司)
別紙図面(1)
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図面の簡単な説明
第1図は本発明実施例に係るミシン目つき無芯ロール製造装置の全体構成を示す斜視図、第2図Aないし第2図Dは第1図に示すミシン目つき無芯ロール製造装置のウエブ切断装置部とウエブ巻付け装置部とウエブ巻上げ装置部の作動説明図、第3図は第2図の要部拡大図、第4図は第3図に示す芯棒の拡大図、第5図A及び第5図Bは第3図に示す巻芯支持装置の作動説明図、第6図は第1図に示す定位置停止装置の拡大斜視図、第7図は第6図のⅦ矢視図、第8図は第7図のⅧ-Ⅷ横断面図、第9図は第1図に示すウエブ送り装置の拡大斜視図、第10図は第1図に示すスリツター装置の拡大斜視図、第11図は第1図のミシン目つき無芯ロール製造装置におけるウエブの巻掛順序を示す概略図、第12図はウエブの加工順を示す概略図、第13図は第9図のⅩⅢ-ⅩⅢ部縦断面図である。
1…原反ロール、6…回転刃ロール、12…芯棒、13…小ロール、34…ミシン目、97…カウンター装置、A…原反ロール支持装置、B…ウエブ送り装置、C…バーフオレーシヨン装置、E…ウエブ切断装置、F…ウエブ巻付け装置、C…ウエブ巻上げ装置、H…駆動装置、I…定位置停止装置、W…ウエブ、Wa…ウエブ端。
別紙図面(2)
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図面の簡単な説明
図面は本発明の一実施例で、第1図は或る程度の巻取が行われている状態における全体の配置を示す側面図、第2図は所定長さのシートの巻取を終つた停止状態における要部の拡大側図面、第3図は巻要停止中に主軸及び上下ローラが回転を開始した状態における要部の拡大側面図、第4図は主軸及び上下ローラが回転を終つた状態での要部の拡大側面図、第5図はシートを 方向に切断している状態の要部の側面図、第6図は参致が再開した初期状態での要部の拡大側面図、第7図は上下ローラの回転量検出装置を示す側面図である。
図中、a…nはローラ3群の 接するもの同志によつて形成した谷で、谷は一つ宛巻致位置から端末巻付位置に向く様に間歇的に移動させられる。6は上部コーラ、7は下部コーラ、8は上部コーラが上下方向に機動させられろのをガイドナるスロツト、9は上部ローラを機動するアクチニニータ、10はバーフオレーシヨン装置を示す。
別紙図面(3)
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<省略>
図面の簡単な説明
図面本は発明の一実施例を示すもので、第1図に概略説明図、第2図は一部の平面図、第3図はクラツチ作動装置の拡大正面図、第4図はオートカウンター帰零作動装置の説明図である。